中学生とともに学ぶ場から地域の防災力向上へ【チャレンジの先輩に聞く! 活動を始めるヒント Vol.48】

池下 真樹さん

(新豊崎中学校元気アップコーディネーター)

きっかけはPTA

池下さんは、子どもが中学校に通っていた当時、PTAの役員を務めることになりました。そのきっかけは積極的に手を挙げたわけではなく、順番にしないといけないからという、いわば消極的な理由でした。しかし、引き受けたからには自分なりに楽しもう!と活動をしていました。そんなある日、中学校から「元気アップコーディネーター」(※1)を引き受けてくれませんかという打診があります。興味はありましたが、とても1人ではできないと思い、同じ時期にPTA役員をしていた友人たちに声をかけ、4人ですることになりました。前任者はすでに退任していたため、どのように活動していこうか戸惑うこともありましたが、かえって前例にとらわれずにチャレンジできたといいます。

口に出して思いを伝える

元気アップコーディネーターの活動では、学習会のほかに、学校の授業ではできない経験ができる機会をつくっています。例えば、料理やお菓子をつくる会です。誰に教えてもらおうかと考えたときに、家庭科の先生に思い当たりました。家庭科の先生は料理を教える技術があります。生徒は普段作らない料理を自分たちで作ることができる、先生はやりがいをもって取り組んでくださる、と双方にとってよい機会になりました。ほかにも、夏に地域の専門学校と連携して、専門学校生がインターンシップとして生徒に浴衣の着付けを教えにきてくれたこともありました。

池下さんたちが企画する際のポイントは「継続する」ことです。1回で終わってしまうのではなく、子どもたちからヒントをもらいながら、継続して意義があるものをやり続けていくことを心掛けています。先生方とは学校へ関わる立ち位置は違うのですが、持っている情熱は同じ。先生方は生徒にこんなことも経験させてあげたいという思いはあっても、他にもたくさんの業務を抱えているのが現状です。元気アップコーディネーターが一緒に活動することで、生徒にいろいろな経験を提供できる機会を増やせることもやりがいの一つとなっています。もしかしたら、幅広い経験の中で将来のことを考えるきっかけになるかもしれません。中学校生活に彩りを添えられたらと活動を継続しています。

自分が「楽しむ」こと

池下さんが活動を進める中で心がけていることは、自分自身も「楽しむ」こと。できるかできないかを最初に考えるのではなく、「楽しめそうか」、「やりたいと思うか」といったことをまずは考えてみるそうです。もちろん大変なこともありますが、楽しんでいると助けを得ることができたり、ヒントになる助言をもらえたりということも多くありました。やりたいけれどどうやったら実現できるのかわからないときにも、その思いを話してみると、その人が知らなくても「この人に聞いてみたら?」と提案してくれることもあります。それに、自分自身は苦手でできないかもしれませんが、助けを得ながら補い合って活動をすることで仲間が増えていき、チャレンジできることも増えていきました。「楽しまな損」と笑う池下さんだからこそ、少しずつ気心が知れ、そして自分が思っていることを話してみるうちに、つながりが広がっていったといいます。

中学生の安心・安全を守る

 

今池下さんが特に力を入れて取り組んでいる活動の一つに防災教育があります。1年生は住宅地図から街の強みや弱みを調べ、街のなかにあるさまざまな防災資源(人・物・こと)を可視化することを通して防災の基礎を学びます。2年生は避難所運営でジェンダーや多様性がどのように組み込まれているか考えます。3年生は災害時のトイレ体験を通して、2年間考えてきた多様性のある防災をどう反映させるか考えます。

防災に取り組むきっかけになったのは、新豊崎中学校区で開催されていた「攻犯(こうはん)パレード」(※2)でした。地域で安心・安全に暮らしていくためには、防犯だけでなく防災の取り組みも並行して必要と考え、少しずつ始めていきました。生徒自身が柔軟な思考と目線でジェンダー平等や多様性への配慮に気づき、考えて行動できることをめざしています。生徒や先生、地域と一緒に学びを積み重ねてこの場に蒔いた防災の種がきっかけになり、やがて飛び立ったところで防災に関する取組の花を根付かせてくれることでしょう。

(※1)元気アップコーディネーター…学校と地域をつなぐ調整役として、生徒の生活習慣の確立や学力向上など学校課題の解消に向け、学校のニーズに応じた取組を行う人

(※2)攻犯パレード…「地域の子どもたちは地域で守ろう」「我が子を被害者にも加害者にもさせない」との願いを込めて、大阪府警音楽隊先導のもと行うパレード。

 

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