リケジョ(理系女子)の将来を考える。夢や目標を叶える、大阪府立大学 堀内寛子さんインタビュー

※「リケジョ」…理系女子の略語

平成26度に大阪市主催事業(受託事業者:特定非営利活動法人大学コンソーシアム大阪)「若者のためのライフデザイン支援事業」に参加した、大阪府立大学の理系女子大学院生チーム“IRIS”(I’m a Researcher In Science) に所属する同大学院生命環境科学研究科の堀内寛子さんを取材しました。

大阪市の事業に参加した動機は、自分たちのライフプランを考えたとき、大学院卒業後の理系女子の進路が全く想像できないことから、社会に出て直面する課題と、それをどう乗り越え働き続けていくかについて考えたいと思ったからだそうです。日本女性の労働の現状を調査・発表し、社会人講師を招いて話を聞いたり、学生向けのワークショップを開いたりする中で、結婚・出産などのライフイベントを迎えても女性がいきいきと働き続けるためにはどうすればいいのか、問題提起を行ってきました。活動を通して見えてきたものとは?

 

◇「就職後の人生は自分で何とかするしかない」(社会人として活躍していく上での夢・目標・不安)

まずは博士号を取得し、その後は食品か製薬の企業に就職して科学的根拠に基づいた研究開発やものづくりに携わりたいという将来の夢を語る堀内さん。その素材が入っている食品を食べるだけで、自然に病気を予防できるような機能性食品素材を開発したいそうです。

「個人的にはできればコンスタントに働き続けたいと思っています。仕事以外では、いま“IRIS”でやっている小・中学生向けの理科実験教室のような社会貢献活動をしていきたい。ただこれからの人生の具体的なプランが全然想像できないんです。働き続けている女性の知り合いが周囲にいなくて話を聞くこともできません。研究室を見渡すと先生は男性ばかりです。女性の私が、男性と同じように働き続けることができるのかと不安になることもあります。将来的に親の面倒を見なければいけないとか、結婚、出産することが仕事を続ける上で障害にならないのかとか、漠然とした不安があります。大学のキャリアサポートセンターは内定までは支援してくれますが、その先の人生は自分で何とかするしかない。女子学生なら皆同じような不安を抱えているのではないでしょうか。」

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◇「コーディネーターで自信」(「若者のためのライフデザイン支援事業」に参加した際の役割)

今回の事業には企画から運営まで中心メンバーの一人として関わったという堀内さん。企画のテーマは「結婚・出産・子育てしても仕事を続けて活躍したい!~社会人の先輩に学ぼう!~」。事業選定のために大阪市と大学コンソーシアム大阪を相手に企画書のプレゼンテーションを担当したのも堀内さんです。また、事業の中で社会人講師を招いてパネルディスカッションを開いたときにはコーディネーターも務めました。

「企画を立てて実行して、パネルディスカッションでは普通の学生なのにコーディネーターをやらせていただいて、貴重な体験をさせていただきました。授業外の活動なので時間や労力を取られましたが、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を鍛えるいい機会になったと思います。自信が持てました。」

◇「自分なりのワークライフバランスを見つける」(事業が自身の夢や目標にどうつながったか)

事業ではまず、チームで日本の女性の労働の現状を調べ発表したそうです。そこでわかったのは、今でも「日本の女性は新卒で就職しても辞めてしまう人が多い」という現実。そして30代で労働率が低くなる「M字化」です。就職しても結婚・出産で仕事を辞め、また「再雇用となったときには非正規雇用が圧倒的に多い」こともわかりました。同時に「リケジョ」が社会でまだまだ少数派であるかも思い知らされたそう。

「生涯賃金でも大きく差が出ます。正社員で働き続けたときと、一旦辞めてまた正社員で再就職したときでは生涯賃金に一億円くらい損失が出るという資料がありました。再就職がパート・アルバイトなら二億円の損失です。今回初めてそれを知って愕然としました。

ずっと働き続けたいと思っているので、結婚・出産・育児で仕事を辞めることなく続けられる環境の整った会社を事前にリサーチしておくことの大切さも、この事業への参加で良く分かりました。」

講演会ではそういったデータを先に紹介して、社会人の方がどのように働き、工夫されているのかを聞きました。堀内さんは何人かの社会人の話を聞く中で、一般企業に勤め、現在二人目のお子さんの育児休暇中という女性を自分のロールモデルにしたいと思ったそうです。

「子どもを持つと仕事に割ける時間や労力は限られる。周りに迷惑をかけないためにも、一人で仕事を抱えずに、自分のしている仕事を誰でもわかるようにしておくといいとアドバイスがあり、参考にしたいと思いました。

働きながら子育てすると、自分の自由な時間は少なくなるので、自分に合ったワークライフバランス(仕事とそれ以外のバランス)を見つけること。また便利グッズや、いろんなサービスを利用したりして時間を作り、子どもには愛情をたっぷりかけてあげるように、『完璧を求めないでおけ』とアドバイスをいただきました。」

◇「リアルに感じた10年後の自分」(事業により不安がどのような解消されたか)

ワークショップでは、今から10年後までを仕事とプライベートに分けて、1年ごとにどんなイベントが起こるか具体的に想像して書き出してみよう、という面白いワークをしました。それをグループで発表しあう。そして「出産を望んでいたけど子どもが生まれなかった」「大けがをした」「ヘッドハンティングされた」など予想外のことが起こったときに、自分の人生設計をどう変更するか、ということも考えました。

「このワークショップで、自分の近い将来についてリアルに感じることができました。意外と10年後はすぐだなと。漠然と不安に思っていたことが、いざ書き込んでみるといろいろできるし、それをしていたら時間が足りない、では今できることは何だろう? と、具体的に見えてきたのが良かったです。」

◇「どんな人生にしたいかを考えたら、あとはしなやかに」(同世代の若者にメッセージ)

「働く女性のニーズは増加しているのにもかかわらず、結婚・出産で仕事を辞めてしまう女性が多いという現実を、同世代の若者はあまり知らないのではないでしょうか。働く女性が直面している問題は、男女両方に関係する問題です。個人の生き方は多様になってきているけど、働き方、生き方の制度や風潮は変わっていないと感じます。

私たち世代が求められているのは、女性だからという理由でネガティブにならず、どんどん新しいことや自分のやりたいことにチャレンジすることだと思います。

あまり深く考えずに、肩の力を抜いてしなやかに生きましょう(笑)。自分はどんな人生にしたいかをしっかり考えた上で選択し、あとは『なんとかなるんちゃうか』と軽やかに生きていきたいですね。」

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参加した事業では改めて「リケジョ」は少数派だと感じた堀内さん。しかし、それがきっかけとなり、自分にあったワークライフバランスや長い将来を女性としてどう生きるかを知ることが、就活での会社選びには必要だと気づけたと語っていました。就職までを考えるのではなくその先のプランを立てる機会を学生のうちに持てたら、女性が活躍する場面がもっと増えるのではと期待を寄せていました。

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