介護のために離職する中堅社員、ベテラン社員が増加傾向にあります。この方々が、離職すると企業にとっても大きな痛手であり、また、離職された方も、今後の生活が不安定になり、双方にとってデメリットが大きいものです。人材の確保と定着をすすめるためには、従業員の多様な働き方を支援することが必要です。
平成29年1月1日の「改正育児・介護休業法」施行を受けて、漸進的な取り組みをされている企業からの事例報告や、企業における仕事と介護の両立支援について考えるシンポジウムを開催しました。
基調講演「仕事と介護の両立に向けて〜介護離職ゼロの職場をめざす〜」
基調講演では、「仕事と介護の両立に向けて~介護離職ゼロの職場をめざす~」というテーマで、ソフィアステージ社労士事務所代表 社会保険労務士の福西綾美さんにご講話いただきました。
日本は現在超高齢化社会と言われ、猛烈なスピードで進展しています。65歳以上では5人に1人、75歳以上に関しては3人に1人が要介護、要支援に認定されているという統計も出ています。
仕事と介護が両立できず介護を理由に離職される方は年間10万人にものぼっています。そして、その介護は突然始まるケースが多いようです。
「備えあれば憂いなし!ちょっとした心構えがあれば良いのではないか」
- 本人の希望と主介護者の事情を考慮し”どこで”介護をするのか
- ”だれが”介護を担うのか、プロに任せるのか、家族が介護するのか
- 介護費用は”どうやって”用意するのか
だれにでも突然、介護をする日常が訪れる可能性があります。事前に話し合いをして備えておくことが大切です。
社会の支援にも頼り、所属する会社の社内制度を利用し、「自分だけで介護をしすぎない」ことも大切です。不安なことは専門家になんでも相談することや、介護を深刻に捉えすぎずに、自分のための時間を少しでも確保することも重要です。
仕事と介護の両立支援、企業としてできること
社員が介護に直面する前に、社内で介護に関する制度の周知をし、相談しやすい環境を整備することが重要です。
制度はあるけれども”利用できない”のでは意味がありません。社員が自分だけで抱え込まないように、日頃から介護問題だけでなく社員の個人的な悩みや不安を察知する力も必要です。
面談を実施している企業も多く見られますが、反対に特に何も行っていない企業も同数程度存在するとも言われています。残念ながら介護の悩みの相談を勤務先にするという人はまだまだ少ないようです。
上司(経営者・管理職)が介護離職防止対策の取り組みを宣言し、仕事と介護の両立支援制度を継続的に、広く社員に周知し、相談しやすい環境作り、助け合い・お互い様の風土作りが大切です。
介護はいつまで続くかわかりません。会社側、そして介護をする本人が”仕事と介護が両立できる方法”をそれぞれ考え、行動することによって充実した介護生活、会社側・社員両者が満足のいく働き方、業績アップにつながる働き方が実現できるのではないでしょうか。
先進的な取り組みをされている3社の事例報告とパネルセッション
平成29年1月1日の「改正育児・介護休業法」施行を受けて、先進的な取り組みをされている企業の事例報告とパネルセッションを実施しました。
日本生命保険相互会社 人事部輝き推進室 室長 浜口知実さん
介護離職ゼロを目指す日本生命の取組ー「介護に向き合う全員行動」ー
(平成26年度「大阪市女性活躍リーディングカンパニー市長表彰」優秀賞)
大和ハウス工業株式会社 執行役員 人事部長 能村盛隆さん
大和ハウス工業の介護離職防止への取り組み
(平成27年度「大阪市女性活躍リーディングカンパニー市長表彰」最優秀賞)
株式会社ザイマックス関西 グループリーダー 松田智恵さん
働き方改革による雇用創出・離職防止
(令和元年度「大阪市女性活躍リーディングカンパニー市長表彰」優秀賞)
以上3社から、現在社内で取り組まれている仕事と介護の両立支援やその効果を発表いただきました。
パネルセッションでは、3社のみなさんがパネリストとして次のテーマについて回答していただきました。
・両立支援の取組みを進めるにあたって困難な場面に遭遇したか
・両立支援の取組みを進めた結果、社内での良い反応はどのようなものか
・両立支援の取組みを進めた結果、会社全体として良かった点はあったか
・今後の課題・挑戦
3社とも、社員に実態を聞き取りながら、利用しやすい制度を設けており、職場全体が介護に携わっている人を支えながら働きやすい環境を整備されています。
企業が持続的に成長発展していくためにも、仕事と介護が両立できる取り組みが非常に重要であり、介護に向き合っている社員に「あなただけじゃない、お互い様だよ」という風土を作り上げていくことが求められています。両立できる制度を社内で作り、継続的にそれらを周知し、利用する人が一人でも増えれば、介護離職という選択をする人は減るのではないでしょうか。
★大阪市女性活躍リーディングカンパニーについて