ライフプランから考える新たな「就活」とは?

新たな就活とは

「就職活動」には新たな視点が必要

売り手市場と呼ばれる昨今、学生にとっては、夏のインターンシップから、多くの企業と出会える機会があります。

学生にとってはよい状況のように思えますが、このような状況では、就職活動時に見定めるべきことが見定められず、大きな覚悟を持てないまま、なんとなく入社する、ということにつながりかねません。

これまでの就職活動においては、自分の価値観や特性を理解する自己分析をメインに、業界研究などで興味のある会社を探していく、といったやり方が主流でした。これらの手法は、不景気のもと長く続いた「就職氷河期世代」に完成されたもので、「いかに良い会社に就職するか」という点が重要視されたものでした。

しかし、数多くの選択肢がある今、自分にとって良い会社とはいかなるものかを考えて企業を選ばなければならない時代になっています。適職や、興味のある仕事について検討するだけでなく、これから将来に向けてどのような人生を送りたいか、という長期的な視点で会社選びをするということも、大切な視点の一つといえるのではないでしょうか。

 

よく聞く「働き方改革」ってどういうこと?

ここ最近、さまざまなメディアにとりあげられている「働き方改革」とは、いったいどのようなことを言うのでしょうか?

単に長時間労働を削減する、という動きであると考えられる方も多いかもしれません。日本の多くの会社では、今まで「男性中心のキャリア形成」「雇用保障」「遅い昇進」「新卒一括採用」「ジョブローテーションによる人材育成と内部調達中心の人材調達」といった特徴のある人事管理を行ってきました。ところが、労働力人口の減少及び少子高齢化による若手人材の減少により、このシステムが揺らぎ始めています。

これまで想定していた人材が減少しているため、それを補う必要がありますが、特に、大阪をはじめとする近畿地域においては、女性の有業率が低く(図2)、大きな課題となっています。待機児童の問題等、関連する問題はさまざまにあるものの、厳しい競争社会の中で、長時間労働を強いられる結果、育児や子育てをする女性はそこへの参加が困難になっているというのが、現状といえるのではないでしょうか。つまり、意欲や能力が高くても、このような状況により、働くことをあきらめている女性が多くいる可能性があるのです。

このような女性たちが社会で活躍するためにも「働き方改革」は重要になってきます。

図1 OECD加盟諸国の労働生産性
OECD加盟諸国の労働生産性
(出典:日本の生産性の動向 2014年版より)

 

図2
労働人口
(出典:男女共同参画白書(概要版) 平成27年版)

 
働き方改革についての議論でOECDをはじめ、様々なところで指摘されることとして、他国と比較した場合の日本の「生産性の低さ」についてがありますが、特に問題があるのは「時間当たり労働生産性」ではないかと考えられています(図1)。

これらの課題については、上段で述べた特徴的な人事管理とも大いに結びついており、昇進をめざす男性社員が、家のことを顧みず遅くまで残る、というのがこれまでの日本企業の姿が影響していると考えられます。

もし、残業がなく(女性だけでなく男性も)給与が十分にあり、有給休暇の取得もほぼ100%で、それが当たり前という会社があれば、どうでしょうか。仕事以外の時間が生まれることで、自己成長ができる機会が増え、プライベートも充実させ、そこからさらに良い影響を仕事に対して与えられる良い循環が生まれるような気がしませんか。

もちろんそれは、しっかり自分の実力を発揮できる環境があってのことであり、怠けてよいということでは決してなく、逆に時間当たりの生産性を問われる、より実力主義のシビアな世界といえるかもしれません。

このような企業が増えるのは難しい現状ではありますが、働く環境を整え、だれもが活躍できるために努力をし続けている会社は徐々に増えてきています。その一つの基準となるのが、大阪市の大阪市女性活躍リーディングカンパニー認証制度です。

大阪市では、法令の遵守に留まらず、女性にとって働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組むなど、「意欲のある女性が活躍し続けられる組織づくり」「仕事と生活の両立(ワーク・ライフ・バランス)支援」「男性の育児や家事、地域活動への参画支援」について積極的に推進する企業等を、本市が一定の基準に則り認証し、当該の企業等が社会的に認知されることでその取組みが広く普及する取組みとして本認証制度を実施しています。

 

大阪市立大学にて実施した業界研究セミナーのご紹介

セミナー風景
平成29年10月31日、大阪市立大学で、仕事の選び方について先輩社員から話を聞いて考える「先輩社員と話せる業界研究セミナー」を開催しました。
このセミナーは、大阪市が大学等と連携し、これから就職しようとする若者が、多様な働き方、男女ともに仕事と家庭を両立すること、女性が働き続けることの意義を学ぶ機会として、企業で実際に働く若手社会人との交流も交えて実施したものです。

セミナーの冒頭で、講師であるワーク&ライフキャリアコンサルタントの戎多麻枝さんから、「おすすめ企業の探し方」という内容で講義がありました。

戎さんからは、

  • 「おすすめ企業」とひとくちで言っても、何を軸にして生きていくか、どのような生き方を選ぶか、ということによって、それぞれ人によって、「おすすめの企業」は異なってくる。
  • 就職活動は、会社を選ぶ、という視点だけでなく、「生き方を選ぶ」という視点も大切
  • 平成30年に卒業予定の学生のアンケートによれば、会社を選ぶ際の視点として「働きやすさ」を選ぶ人が最も多く、最近の傾向となっている(出典:アイデム 人と仕事研究所2018年卒就職・採用活動に関する調査-総括―)
  • 自分の人生を後悔しないためにも、しっかり自分で考えて自分で決めることが大切。そのためには、自分がそうだと思い込んでいる「思い込み」に気づくということも必要といったお話がありました。

https://apj.aidem.co.jp/upload/chousa_data_pdf/340/2017_10soukatsu.pdf

 
つづいて、大阪市女性活躍リーディングカンパニーの認証企業である、株式会社クボタ、日本電気株式会社 関西支社、日立化成株式会社、富士通株式会社、株式会社マンダムの5社より、活躍されている現役社員の方々にご登壇いただき、自身の仕事や、仕事とプライベートの両立などについて、お話いただきました。

参加した学生さんからは、「先輩方からさまざまな生き方について聞けて参考になった」「今まで労働条件等、目先のことしか考えていなかったが、20代、30代、40代と、先までイメージするきっかけになってよかった」等、自分の生き方を考えるきっかけとなったという前向きな感想を多くいただきました。

個別相談風景

 

これからの就職活動で大切にすべきこととは?

これからの就職活動で大切にすべきことは、「会社」や「仕事」「労働条件」といった情報だけではなく、その後の長い人生、自分がどうやって生きていきたいかをイメージすることではないでしょうか。様々な企業で働く人から話を聞く機会を通じて、自分がいきいきと仕事も生活も楽しんでいる将来を想像できるようなお話をどれだけ聞けるか、というのがポイントかもしれません。

ネットの情報を鵜呑みにするなど受け身のスタンスでは、必要な情報は取得できないでしょう。ぜひ積極的に、様々な企業で働く人と話せる機会をつくり、そこで「生き方」や「ライフプラン」などについて質問していただきたいと思います。

また、企業の皆様には、学生や求職者が自分の生き方を選択できるようなよい機会となるような情報をぜひ積極的にご提供いただきたいと思います。そこから新たな企業の魅力として、学生や求職者に、よりイキイキと伝わり、結果として、人材確保にもつながっていくのではないでしょうか。

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