「ひと」と「まち」の新たな価値を生み出すアップサイクル【チャレンジの先輩に聞く!活動を始めるヒントVol.41】

一般社団法人 うめらく代表で、 都市と地方、生産者と消費者、 地域内外の人をつなぐ交流スポット 「関係案内所なかつもり」のオーナー 山田摩利子さんをご紹介。

山田 摩利子(やまだ まりこ)さん
(一般社団法人 うめらく代表、関係案内所なかつもり オーナー)

未来をつむぐアップサイクルの拠点

古き良き街並みが残る大阪市北区中津。個性的なお店が点在する路地を少し入ると、築65年の2階建てアパートをリノベーションした施設「UPCYCLE中津荘」があります。ここは、中津の魅力を発信する拠点として2022年にオープンしました。ブランディングのお手伝いをしているのは、一般社団法人うめらく代表の山田摩利子さんです。

山田さんは、建物を所有する地主さんに、「これからの時代、使わなくなった物を見直して、新たな価値を与えて再利用する“アップサイクル”が日本の魅力として世界からも求められるようになる。中津にも魅力再発見の要素が沢山あるのでアップサイクル情報発信拠点としてはどうか」と提案。そのアイデアが採用され、施設の名前となりました。

現在は、洋服のアトリエショップや、まちライブラリー、量り売りの食材店など入居者は様々。アップサイクルや、ごみをなくすという意味のゼロウェイストなど、都会から自然環境を大切にする文化発信の拠点となっています。山田さんは1階で、都市と地方、生産者と消費者、地域内外の人をつなぐ交流スポット「関係案内所なかつもり」の運営もしています。

ダブルケアを経て気づいた「やっぱり人や地域とのつながりが大切」

山田さんは音楽大学を卒業後、商社へ就職。出産を機に退職し、2010年から自宅でピアノ教室を始めますが、その2年後に介護と子育てのダブルケアに直面します。

情報を得たくてもネット情報しかなく、また公助のサービスだけでは限界があることを実感し、「今おかれている環境を越えた人や地域の繋がりを作りたい」という気持ちが膨らみます。「人と人の関係が希薄なのはなぜか、自分にできることはないか」といった疑問を自分に投げかけ、やりたいことへのイメージを固めていったといいます。

周りからは「今すぐ起業したら?」といったアドバイスもありましたが、まずは信頼関係をつくり、自分がつくりたいコミュニティデザイン(※1)を見つけて行動したいという思いを大切にし、どんな人と仲間になりたいのかをイメージしながら、イベントやプロジェクトをおこし、関連図書を読んだり、セミナーに行くことに時間を費やしました。

また、地域に飛び込んでボランティア活動に参加するなどして実践的に学んだことも、その後の活動に大きく影響したそうです。「地域には多様な人がいて、職業も年齢も様々。その中で得られるものは沢山ありました。準備期間をしっかりとって学んだことが、今の活動に活かされています」と振り返ります。

現在は、社会福祉法人の地域福祉コーディネーターの職も兼務し、子育て中の方から高齢者の方まで相談の窓口業務もされています。

まちをつくるのはハードをつくる業者だけではなく、ソフトをつくる「地域に住む人たち」

2016年には、SNSで思いを発信したことをきっかけに繋がった仲間と、うめきた開発エリアの暫定利用(※2)に応募したところ、並み居る大企業に交じってなんと採択。未来のうめきたの街を市民も一緒に考えることをテーマにしたイベント「うめきた楽市楽座」を開催します。

ゼロからのスタートでしたが、仲間を集い、近隣の企業や大学を回り、協力を呼びかけました。山田さん含む実行委員の行動力と「人や地域はつながりが大切」という思いが届き、来場者数5,000人規模のイベントを実現しました。

この経験を通して、まちを作るのはハードをつくる業者やまちづくりを謳う企業ではなく、地域で暮らす人々が中心であること、そして自分のやりたいことは、「信頼と実績に基づく人と人とのつなぎ役」であると確信します。

同時に、子どもたちが生きる未来へ良いバトンを繋ぐサービスを生みだしたいという思いも芽生え、2018年に一般社団法人うめらくを設立されました。法人という土台を作ったことで、社会的信用を得られ活動の幅も広がったといいます。

まちの未来

山田さんが運営する、「関係案内所なかつもり」も、人と人をつなぐ交流スポットとして、注目されています。「なかつもり」の中では、夢であった飲食店を運営する方、野菜の余剰生産の販売先として利用する近郊農家の方、社会貢献を通して地域の福祉を充実させたいとボランティアサークルを立ち上げた福祉事業所の方など、様々な人が「なかつもり」に関わり、つながることで、新しい活動やサービスが生まれています。

山田さんは、仲間たちとイベントを企画したり、事業計画の相談に乗ったり、広報に協力したり、コミュニティの潤滑油としての役割も担っています。

これからチャレンジしたい人へのメッセージをお聞きすると、「まずは目標とする未来像を描き、その未来像を起点に、そこに向かうための具体的プランを立てます。できないではなく、やり方を探しながら小さな目標を掲げることが大切です。「なかつもり」にも是非来てください!」とのことでした。

地域の困りごとにも寄り添い、明るい笑顔でアイデアを生み出す山田さんの周りでは、これからも新しい取り組みやコミュニティの輪が広がり続けていくことでしょう。

(※1)コミュニティデザイン…人々のつながり方やつながるしくみを設計すること

(※2)うめきた開発エリアの暫定利用…自治体、経済団体等で構成される「うめきた2期区域暫定利用検討委員会」が主催の元大阪駅の貨物ヤード跡地の大規模複合開発事業で2024年にまちびらきを予定しており、開発が本格化するまでの間、周辺エリアの賑わいの創出が図られるよう、暫定的な利活用を図っていること

一般社団法人 うめらく
https://www.facebook.com/umeraku/
関係案内所 なかつもり
https://www.facebook.com/nakatsumori/

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