一人暮らしの大学生による一人暮らしの大学生のためのコミュニティー『大学生食堂』

早川 奈那

好きな言葉は「可能性は無限大」。近畿大学で学びながら、学生コミュニティー『大学生食堂』を運営している、三回生の早川奈那(はやかわなな)さんをご紹介します。

一人暮らしの現実は孤独。ご飯を食べる時も一人。病気にかかっても一人。
でも、そんな学生生活に悩んでいたのは早川さんだけではないと知り、早川さんの「”何か”やりたい」思いに手を差し伸べてくれた方との運命の出会いが背中を押してくれます。その“何か”こそが、一人暮らしの大学生による一人暮らしの大学生のためのコミュニティー『大学生食堂』

平日の夜に一人暮らしの大学生が集まり、一緒にカレーを食べながら交友を深める場所。その場所がどのように生まれたのか、積極的に自分のやりたいこと、自分だからできることを仲間と共にカタチにされてきた早川さんにお話を伺いました。

 

キッカケは運命で…

あの日は早く家を出て、踏切待ちであのお店を見つけて。あの時お店に入って、店主さんとした会話が無ければ、『大学生食堂』や今の私はいませんでした。

私は、愛知から大阪の大学に通うために引越をしてきて一人暮らしをしています。大学名で評価されるのではなく、私自身を世の中に評価してもらうために、「何かをやってみたい」と入学当初からぼんやりと思っていました。

そんな私の学生生活は、友達ゼロの状態から始まり、一緒に授業を受ける友達や、ご飯を食べに行く友達ができて、サークルでバスケットボールを一生懸命頑張って…。
比較的順調に、一回生の前期が終わりました。しかし、家に帰ったら部屋は真っ暗で静かな空間が待っている。学内と自宅とのギャップに寂しさを感じる毎日でした。

後期が始まって、勉強をしっかりしたいという衝動に駆られて、いつもよりも早く家を出ることにしました。通学路にある踏切を待っている時になんとなく周りを見渡すと、オムライスのお店がありました。

今まで何十回も通ったはずなのに、この日はじめてお店の存在を知りました。一度踏切を渡り、お店について調べてみると、営業日は週に2日だけ。
お昼ご飯を食べていない私は「これは行くっきゃないでしょ!」とラグビーオムライス専門店メシヤさんへ足を踏み入れました。

入店した時間はたまたまお客さんが私だけでした。店主さんに「大学生?」と声をかけていただいたことがきっかけで会話が弾み、私の考えや何かしたいという想いを伝えました。

それを聞いた店主さんが一言、
「奈那ちゃん面白いね!何か一緒にやらない?」
この一言から始まったのが、『大学生食堂』です。この経験は、私の人生を大きく変えました。

 

理想と現実

私は、一人暮らしがしたくて愛知県外の大学に行くことを決めて受験をし、これからの生活の想像を膨らませていました。
お隣さんとは仲良しで、同じ一人暮らしの子と一緒に家でご飯を食べたり、同じマンションでは挨拶が飛び交って、せめて顔見知りぐらいの関係は築けるのだろうと。

しかし現実は、お隣さんとは一言も喋らない。一人暮らしの子と関わりがない。同じマンションに住んでいる人はなかなか目を合わせてくれない。そもそも会うことがあまりない。自分が想像していた世界とは全く違うものでした。

みんなで喋りながら夜ご飯を食べたい。一人暮らしでも家庭の味を味わいたい。
何か悩みがある時に打ち明けられる場所を作りたい。住んでいる地域の人との繋がりをもっと感じて欲しい。
何か頑張りたいと思っている学生の応援やサポートがしたい。
などなど想うことがたくさんありました。

それらを形にして、より多くの人に、温かい食事を誰かと一緒に喋りながら食べられる環境を届けたい。
その想いで『大学生食堂』を開くことを決めました。

大学生食堂

私が思っていた、「ああだったら良いのにな、こうだったら良いのにな」が形になった『大学生食堂』は、「子ども食堂」(※1)からインスピレーションを受けて名付けました。

コンセプトは“もう1つの家”です。
実家にいた時に当たり前だったことを、この家でもできるように。着飾らずイキイキと自分が羽を伸ばせるような空間になるように。
実家から離れていても温かい環境を作りたいと思い、ラグビーオムライス専門店メシヤの店主さんの協力の下、『大学生食堂』を開きました。
場所や食材の提供など、店主さんのお力添えがなければ、実現することは難しかったのでとても感謝しています。

『大学生食堂』に参加してくれたみんなは、どんなことを感じたのでしょう。

「一人暮らしで誰かと一緒にご飯を食べることも、ましてや人の手作りを食べる機会も少なくなっていたので、たくさんの同年代の方と食事ができて楽しかったです!」

「普段同じ大学にいても出会えない人たちと出会えてとても楽しく、有意義な時間でした。学校以外にもこのような温かいコミュニティーがあるとより豊かな学校生活が送れそう!」

「カレーの準備から手伝いましたが、誰かと一緒に料理をすることは滅多にないので、このような機会は新鮮でした。一人暮らしなので一人での食事は慣れていましたが、机を囲ってみんなでご飯を食べるといつも以上に美味しいと感じます。大学生食堂は食を通した喜びをみんなで感じ合うことができ、悩みや嬉しいことを共有し合える場なので、ぜひこれからも定期的に参加したいです。」

みんながこの環境で、心を少しでも温めることができていることが本当に嬉しいです。
私にとって大事な「人とのつながり」が、『大学生食堂』から生まれています。来てくれているみんなのおかげで、『大学生食堂』が素敵な環境になっているなと改めて感じています。


これからも、たくさんの人とのつながりを大切にしながら『大学生食堂』を作っていきます!

(※1)「子ども食堂」:子どもが1人でも行ける無料または低額の食堂であり、子どもへの食事提供から孤食の解消や食育、さらには地域交流の場などの役割を果たしている。『子ども食堂応援企画』厚生労働省

中学時代・高校時代でもやりたいことをカタチにしてきた私

「想うことは誰でもできるけど、奈那はそれを形にできるのが凄いと思うよ。」
よく友達が言ってくれる言葉です。いつの間にかこの感覚が当たり前になっていました。

「私ならなんでもできるでしょ」自信満々で過ごした中学生時代。
私にしかできない事をしたいと思い、新しい行事をつくりました。同じ制服に身を包み、同じ授業を受けて同じ給食を食べる。
ここに個性が無いことにもどかしさを感じ、個性を表現できる行事をつくりました。文化祭の中で様々な生徒が、バレエを舞台で演じたり、漫才や生歌を披露したりしていました。その行事は、私が卒業した今も続いているそうです。
その勢いで高校でも自分で何かしたいと思っていた私は、コロナ禍で深刻になっていた献血量減少の問題を知り、献血バスを高校に呼ぶ事業の企画・運営をしました。

はじめの一歩をみんなで踏み出せば怖くないということで、献血が可能になる年齢(※2)の当時の私たちにぴったりだと思い実行しました。この献血事業は新聞やテレビで取り上げていただきました。

(※2)献血が可能になる年齢:200mL献血は男女とも16歳から。献血事業の情報ページ『献血について知りたい』厚生労働省

最後に

私が想いをここまで形にできるのは、「私が生きている意義を証明したい」
この心に隠れたエンジンがフル稼働していたからです。

私は何のために生まれ、生きているのか。誰のために生きているのか。
後付けでしか見つからないこの答えは、行動するからこそ見つかると思っています。

「私にしかできないことをしたい。」と思い、行動したことがこれまで、様々な場面でクラスの同級生や部活のメンバーに理解されず、受け入れられないこともありました。

でも、私の声を拾ってくれる人や、私の気持ちに共感して味方になってくれる人がいました。今でも変わらず応援してくれる大好きな親友がいます。
リスペクトし合える、お互いに高め合える、一生付き合っていきたい大好きな人がいます。

私は私だけの力ではなく、周りにいる人達が、ありのままの自分を受け入れてくれることで、「私が生きている意義」が生まれることに気づきました。
周りにいる人達が私を受け入れ認めてくれて、私を強くしてくれたおかげで、私らしくいる事ができます。

少しの勇気と行動が、自分らしくいられる環境を見つけるきっかけになるかもしれません。様々なコミュニティーに出会う機会が多いのは、学生ならではの特権ですそこでたくさんの自分の感情や心の声を見つけて行きましょう!

私にも、もうすぐ就職活動の時期がやってきます。就職活動の早期化で、他の学生と進み具合を比較してしまうこともあるかも知れませんが、人生の大部分を占める仕事を決める今、焦って選択をおろそかにしないように、たくさんの自分の感情や心の声を大切にして、やりたいことをじっくり考えながら就職活動に臨みたいと思っています。

大学を卒業しても『大学生食堂』は後世に残していきたいです。他の大学にも、このような場所ができると嬉しいです。

早川 奈那
近畿大学経営学部キャリアマネジメント学科3回生
肩書きがなくてもちょっとの想いと勇気があれば人生を変えられる。これを体現するべく「あったらいいな」を形にしています。自分と向き合って、好きなことをたくさんしながら想いを大切に生きています。
何か頑張りたい方はぜひこちらへご連絡ください!
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