今や誰もがよく利用するネットショッピングや⾷材の宅配。宅配サービスの一般化により、トラック運送業の社会的ニーズは一層⾼まっています。
お客様の希望通りに荷物が届くという「あたりまえ」を支えるトラック運送業界には男性が多く従事している印象がありますが、近年ではさまざまな業種や職種から転⾝してきた女性ドライバー=トラガールたちが活躍しています。
今回は、大阪市此花区に本社がある運送会社株式会社千里カーゴサービスで活躍中の竹本 奈月(たけもと なつき)さんにお話を伺いました。
竹本さんは勤続年数4年目、1歳1ヶ月(2025年5月取材時)になる娘さんを育てながら働くシングルマザーです。産前・産後休暇および育児休暇を経て復帰されました。

目次
私のキャリアストーリー
竹本奈月(たけもとなつき)さんに、これまでのキャリアについてお話を伺いました。
トラックドライバーへの転職を決意!
16歳から工場で勤務をしていましたが、自動車免許を取得したことをきっかけに、トラックの運転に関心を持ちました。
当初、免許は普通自動車のオートマチック限定で取得していましたが、その後、18歳以上で取得できる準中型免許を取得し、普通免許では運転できない3トントラックの運転をする仕事に転職しました。
日常的に家具、機械、食品などを運ぶことが多く、積み下ろし作業も自分で行います。埼玉県まで輸送を行った実績もあります。
勤務中は主にトラック内で過ごすため、人との密な関わりが少なく、工場で働いている時と比べると気が楽なところがあります。好きな音楽を聴きながら運転することも楽しく、トラックの運転が一層好きになりました。
実は私は乗用車の運転は嫌いなんです。でもトラックは乗用車とは違い車高も高く、視界が広いため運転もしやすいため、トラックの運転が楽しくてなりません!
妊娠がわかって、トラックを降りることに
妊娠がわかってからも自分自身はドライバー業務を継続したいと希望していましたが、社長からは重量物の取り扱いなどを理由に、今は自分の身体を大切にして欲しいと助言され、ドライバー業務から、事務や配車確認業務に変わるよう勧められました。職種変更により手当が付かず給与が減少することに不安がありましたが、今は子どものためにも自分の身体を一番に考えようと自分を説得しました。
トラックの運転ができないもどかしさや、慣れないパソコン業務への不安を抱えながらも産前休暇直前まで働き、出産後はいち早くトラックに戻りたい思いで、4ヶ月の育児休暇を取得後復職しました。
子育てと仕事の両立は実母のサポートのおかげもあって順調
現在、私はシングルマザーであるため、すべての育児を一人で行いながら、トラックドライバーとしての仕事を続けることは困難を伴います。朝は4時には自宅を出て出勤しています。娘がまだ寝ているので、静かに家を出て、その後のことは実母に任せています。
実母が毎朝娘に朝ごはんを食べさせ、保育園まで送って行ってくれるので、私は安心して仕事ができています。保育園に慣れるまで心配でしたが、娘は大きく体調を崩すこともなく、元気に通うことができています。
保育園へのお迎えは毎日私が行くようにしています。そのため、長距離輸送の業務は外していただき、現在は関西近郊での配送を受け持っています。とはいえ、「早くお迎えに行ってあげたい」という気持ちがあるので、出産前よりも気持ちに焦りを感じます。安全第一で運転しつつ、毎日の時間管理を心がけています。帰宅後は毎日夕ご飯を作り、娘との時間を大切に過ごしています。
娘の夜泣きにより睡眠時間を十分に取れなかったことはありますが、これまで、仕事と育児の両立が大変だと感じたことはあまりありません。運転中に睡魔に襲われた際には、大きな声で歌を歌いながら眠気を払いつつ安全運転に努めています。ヒップホップなどリズムの良い好きな曲をかけながら運転することで気分もスッキリします!
社内の皆さんの温かい気遣いにも感謝
現在、社内の女性ドライバーは私一人です。まだ1歳の子どもを育てながら仕事をしていることもあり、社長をはじめ職場の皆さんが常に気遣ってくださっていることを感じています。
先ほど述べたように、妊娠がわかってからは事務職への配置転換の配慮があり、復帰後も他のドライバーや配車担当者の方々が温かく接してくださっています。こうした職場の支えが、出産後も仕事を続けたいという意欲を後押ししてくれています。
最近知ったのですが、産前に私が乗っていたトラックは、私が休んでいる間に別の社員が使用していたため、復帰する時には私のトラックはなかったそうです。そんな中、社長が私の好みを考慮して、新しいトラックを一生懸命探してくださり、私の復帰に合わせて用意してくださいました。それが本当に嬉しくて、これからまた仕事を頑張ろう!という気持ちになりました。
私自身も、職場のみなさんに迷惑をかけないよう努めています。保育園の行事など娘の都合で平日に休みをいただくこともありますが、その際も快くご対応いただいています。私もできるだけ早めに予定を伝え、業務に支障が出ないように心がけています。

この仕事の魅力とは?
正直なところ、トラックドライバーは女性には厳しい仕事かもしれません。拘束時間が長く、力仕事や長時間運転も日常的であり、一定の運転技術も求められます。
しかし、私は昔から体力には自信があり、腰が強いので、力仕事も問題なくこなすことができています。
また、トラックの運転が大好きなので、この仕事に楽しさを感じています。「一生続けたい」と思える仕事に出会えたと思っています。
1日の仕事を終えた時の達成感や爽快感は格別です。周囲のトラックドライバーからも「頑張っていてすごいね」と声をかけていただくこともあり、その言葉が嬉しく、自分の仕事に誇りをもって取り組んでいます。
また、トラックドライバーとしての生活や日常の想いをSNS(X)で投稿していると、フォロワーが2,600人を超えたことがありました。同業他社のドライバーの方々がその投稿を見てくださっていて、メッセージやアドバイスをくれたこともあり、とても励みになりました。
今後の目標や夢
娘が生まれてからは、より一層安全面に気をつけていますが、トラックの運転にはリスクが伴います。事故による代償が大きく、万が一のことを考えると、別の仕事の方が安心かもしれないと考えることもありますが、それでも私は将来的に大型免許も取得したいと考えています。
また、娘の育児がもう少し落ち着いたら、資格の勉強をしたいと考えています。ネイルやまつ毛など美容に関する分野に興味があり、学んでみたいという思いがあります。トラックの仕事も大好きですが、違う仕事をする自分の姿を想像することもあります。
今は休日のほとんどを娘と過ごす時間にあてており、日曜日は娘と公園で遊んだり、保育園で必要なものを買いに出かけたりしています。自分だけの時間や友達と過ごす時間は取れていませんが、現状には満足しています。趣味がトラックの運転と言えるかもしれません。
娘は今、ミニカーのタイヤに興味を持っており、そんな娘を見ているととても癒されます。いつか近いうちに自分のトラックに娘を乗せてみたいです。そして、これからも娘のためにも精一杯働いて、娘の成長を一番近くで見守れる母親でありたいです。
最後に固本秀徳社長よりメッセージ

竹本さんはとってもやる気がみなぎっている女性社員です。かなり根性があって、礼儀もあってさすがやなって感じることが度々あります。これは出産前も後も変わらない印象ですが、出産後は特に人への優しさが感じられるようになりました。棘がなくなったとでも言うのでしょうか。
こんな女性社員が今後も増えて欲しいと望んでいます。女性部隊ができたら、一つの仕事を彼女らに任せたい思いがあります。
竹本さんの日頃の業務を見ていると、細かいところに気が利き、積み込み技術も女性ならではの洗練されたスキルを持っているので積み込みがとても綺麗です。これは他の社員も言っていることで、竹本さんを褒めています。
今は子どもをしっかり育てて欲しいと思っていますが、やりたいことや困ったことがあれば遠慮なく言って欲しいです。そして、将来的には新人を育成する指導員になって欲しいと思っています。
今は本人からも幸せオーラを感じるので、私自身も嬉しい思いです。出産後も一番に会社に赤ちゃんを連れてきてくれて嬉しかったですし、今後も竹本さんと娘さんを見守っていけたらいいなと思っています。