【生理・PMSは甘え?×キャリアか育児か】 桃谷順天館が挑む 女性の健康とライフステージ

「女性活躍推進」という言葉を耳にする機会は増え、仕事と生活の両立を支援する制度や環境も整ってきました。しかし実際の職場では、「制度はあるのに使われない」、「現場の負担が増えるのでは」といった声があり、取組が思うように進まないケースも見受けられます。特に女性特有の健康課題や、出産・育児に伴うライフステージの変化は、目に見えない「キャリア中断」の不安もはらんでいます。

今回お話を伺ったのは、創業140年以上の老舗企業・株式会社桃谷順天館です。同社は、独自の「働き方改革」を進めながら、ライフステージの変化にかかわらず誰もが力を発揮し続けられる環境づくりに取り組んでいます。

制度を整える立場である人事担当のAさんと、実際にフルタイムで復職したのち、仕事と家庭の両立の限界に直面した秘書室勤務のBさんのお二人にお話を伺い、「本音」の取組を語っていただきました。

まずは制度を整える側の人事担当Aさんに、導入の背景を伺いました。

【生理・PMSは甘え?】形だけの制度から、言える風土への脱却

――女性の健康課題に着目し、環境を整え始めたきっかけは何だったのでしょうか?

人事担当Aさん(以下Aさん):弊社は女性が多い職場です。以前から法律で定められた「生理休暇」はありましたが、社内で十分に知られておらず、使っている方もほとんどいない状況でした。ある日、女性社員が生理による強い体調不良で出社できなくなったことがありました。その際、彼女は上司へ休みの連絡を入れていたのですが、生理休暇ではなく自身の有給休暇を取得していたそうです。当時は制度が職場全体に浸透していませんでした。※

その女性社員の上司は男性でした。このことから、「そもそも男性上司が生理休暇を知らないのではないか」、あるいは「知っていても女性側が言いづらいのではないか」という2つの課題が見えてきました。こうした言いづらさのある職場の雰囲気を変えたいと思ったのが、環境を整え始めたきっかけです。

※生理休暇の給与について
労働基準法上の生理休暇は有給・無給の定めは無いため、企業ごとに取扱いは異なります。詳しくは各企業の規定(就業規則等)をご確認ください。

――具体的にどのように制度を変えていったのですか?

Aさん:2019年に制度の名称を「エフ休暇」に変え、生理だけでなくPMS(月経前症候群)の体調不良でも使えるようにしました。認知度を上げることが最優先でしたし、何よりも社員みんなに当事者意識を持ってもらいたかったので、名称を社内アンケートで募集しました。社員が制度づくりに関わることで、より広く知ってもらえると考えたのです。

名称を「エフ休暇」に変えたことで、女性社員から「申請しやすくなった」との声が多く寄せられました。
導入当初、男性社員はよくわからない部分がありながらも「そうなんや、しんどいんや」と受け止めてくれる一方で、女性社員でも症状が軽い方は「休むほどのことなのかな」という受け止め方をしているようでした。

そこで、産業医に「生理とはどういうものなのか」という内容をまとめた資料を作成いただき、社内で周知を行いました。また、社内への提案の場でも、生理で本当につらい思いをされている方の割合を調べたうえで、「このくらいの割合の方が、このような症状でつらい思いをされています」という実態を共有しました。これは甘えではなく、ケアすべき健康課題であるとの認識を社内で一致させ、現場の「言いづらさ」を取り除き、制度を利用しやすくしました。

右:「みんなに当事者意識を持ってもらいたい」と語る人事担当のAさん
左:秘書室勤務のBさん

続いて、実際に育休復職を経験した秘書室勤務Bさんに、現場のリアルを伺いました。

【キャリアか育児か】盲腸、インフル、帯状疱疹……限界で知った「母親の代わりはいない」

――育休から復職された現場のリアルな状況はいかがでしたか?

秘書室勤務Bさん(以下Bさん):私は昨年8月にフルタイムで職場復帰しました。子どもはまだ1歳になったばかりで、保育園に入った直後の免疫が十分ではなかった時期です。また、私自身も体力が戻りきらない状態で復帰したので、想像していた以上に大変でした。仕事と育児を必死に両立させようとする中で、復帰して2か月経ったころから立て続けに体調を崩してしまって……。子どもの体調不良に続いて私も盲腸になり、次はインフルエンザになり、年末には帯状疱疹まで出てしまいました。睡眠不足でしたし、振り返ってみると体が悲鳴を上げていたなと思います。夫からも体調を心配され、思い切って上司に「時短勤務に切り替えをすることができるか」相談させてもらいました。

右:一人で無理をして抱え込んでいた時期を振り返り、現在の働き方を語るBさん
左:人事担当のAさん

――フルタイムから時短への切り替えに、躊躇や葛藤はありませんでしたか?

Bさん:すごく悩みました。秘書としての役割をしっかり果たすためにも、勤務時間を長く確保したかったのですが、無理をして体調不良で頻繁に休んでしまうと結果的に周囲の負担が増え、かえって迷惑をかけてしまうのではないかという思いに至りました。そこで、いったん時短に切り替え、体調を整えながら毎日安定して出勤する方が望ましいのではないかと考えました。上司に相談したところ、「仕事の代わりはいるけれど、『お母さん』の代わりはいない。お子さんを優先してあげてください」と温かい言葉をかけてもらいました。本当にありがたく、救われました。

最後に、つくる側の意図と使う側の実感を照らし合わせながら、制度が現場でどう機能しているのかをお二人の視点で伺いました。

優秀な人材の「キャリア中断」を防ぐことが、企業の生存戦略

――制度を導入しても、他社では「時短勤務だと役職から外される」「周囲に不満が溜まる」という話も聞きます。桃谷順天館ではなぜ制度がうまく機能しているのでしょうか?

Aさん:弊社では育休から戻る際、原則として前と同じ部署、同じ役職で戻ります。時短勤務に関しても「取るのが当たり前」という空気感があるのでキャリアの降格につながることはなく、上司も周囲も違和感を持たない環境です。また、上司が時短勤務をしている場合もあります。「夕方までしかいないから、それまでに確認しよう」と、周囲の人たちが計画的に業務を組み立てるなど工夫し、周囲の理解のもとで成り立っています。また、制度を利用する当事者に関しては、半年に1回面談の機会があります。「実際にやってみてどうだったか」を振り返り、状況に応じて業務量を調整するなど、継続的なフォローも行っています。

――他社の経営層や、職場環境を変えたいと考えている企業へメッセージをお願いします。

Aさん:制度は導入して終わりではありません。実際に社員に利用され、必要に応じて見直しを続けながら、働きやすい職場環境づくりにつなげていくことが最終目標です。生理でつらいと感じても「忙しいから」と我慢したり、復帰したいと思っても「仕事上難しいから」と遠慮したりして、過剰に他人の目を気にする必要はありません。

また、一人で抱え込まずに周囲に頼ることは、決して後ろ向きなことではなく、持続可能なキャリアを築くための「前向きな選択」です。ライフステージの変化をきっかけに優秀な人材が辞めてしまうと、企業にとっては大きな損失です。新しい人を採用し育成するには大きなコストがかかります。だからこそ、当社では子どもが10歳になるまで時短勤務を利用できるようにしたり、「エフ休暇」や不妊治療や病気治療の通院や安静(病気の種類は、がん・脳卒中・肝疾患・難病・心疾患・糖尿病に限定)で使える「ライフサポート休暇」などを利用することで、健康状態の変動に対応しています。これは企業が生き残るための「人財戦略」そのものだと思います。

ライフステージの変化にかかわらず、長く働いてもらうための職場環境づくりは、企業にとっても多くのメリットがあります。

Bさん:「復職したからには頑張らないと」と一人で無理をして抱え込んでしまった時期があったからこそ、自分の不調に目を向け、周囲に相談して頼ることも前向きな選択だと学びました。子どもとの時間を大切にしながら、会社に貢献していきたいですし、子育てに余裕が出たら再びフルタイムに戻ってステップアップもめざしたいですね。

株式会社桃谷順天館(ももたにじゅんてんかん)

大阪市中央区上町1丁目4番1号

1885年(明治18年)創業の化粧品メーカー。創業当時の精神である「順天(天に従い人々に奉仕する)」のもと、ニキビをはじめとする肌悩みに寄り添う商品・サービスを展開しています。近年はライフステージに応じた働き方改革にも取り組み、人と組織を活かす企業姿勢でも注目を集めています。

大阪市女性活躍リーディングカンパニー認証企業【830】株式会社桃谷順天館

 

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