絵本で広がる私の活動【チャレンジの先輩に聞く!活動を始めるヒントVol.43】

南埜 育子 さん

南埜 育子 さん
(キッズスマイルブック 代表)

子どもが主体の読み聞かせグループ

「キッズスマイルブック」は、大阪市北区で小・中学生が主体となって活動する読み聞かせボランティアグループです。

絵本の読み聞かせというと、大人が子どもに向けてしている光景を思い浮かべる方が多いと思いますが、「キッズスマイルブック」では、小・中学生の子どもたちが、より小さい子どもたちに向けて読み聞かせをする、他にはなかなかない活動の形が特徴です。絵本や読書の楽しさを子どもたちに知ってもらうことを目的に、2015年にグループが発足しました。

現在は、小学3年生から中学3年生の18名が在籍しており、北区子ども・子育てプラザや、北図書館で活動を行うほか、クレオ大阪子育て館などの公共施設でも不定期にイベントを開催しています。この活動を始めたのは、小学校で図書ボランティアをされている南埜 育子(なんの  いくこ)さんです。

子どもたちの意欲を大事にしたい

グループ発足のきっかけは、南埜さんが図書ボランティア活動をおこなっている、豊崎本庄小学校での委員会活動。そこで、高学年の図書委員が低学年に向けて、読み聞かせをしていたところ、「もっと読み聞かせをしたい」と子どもたちからの声を聞きました。

子どもたちの声に後押しされた南埜さんは、「読みたいというなら、まずは私が子どもたちと一緒に読める場所を作ろう。」と思い、図書室を借りて練習を始めました。しかし、練習をしても読み聞かせる場所がない。南埜さんは、手探りで地域の小学校や図書館を回り、受け入れ先を探しますが、すぐには理解を得られませんでした。周りからも、子どもが読むということに「そんなことできるの?無理じゃない?」といった消極的な声も少なくなかったそうです。

「大人のようにはいかないけれど、何よりも子どもたちが楽しそうにしているし、やりたいという意欲を大事にしたい」。子どもたちを一番身近で見てきた南埜さんだからこそ感じた思いを原動力に、発表の場を探し続けました。

そうした中、北区子ども・子育てプラザから「うちの遊びスペースでよければ、やってみませんか?」と声をかけられます。これがきっかけとなり本格的に活動をスタート。活動を続けるうちに学生メンバーも増え、「キッズスマイルブック」を知った図書館や公共施設などからも声がかかり、定期的にイベントを開催するようになりました。その後は、保護者も運営に加わり、ともに、活動を広げておられます。

学びあい、育ちあいの場所

「キッズスマイルブック」のイベントでは、最初から最後まで子どもたちが進行します。絵本を選ぶのも、読み方も子どもたちは自由です。

「私は絵本の持ち方以外は教えません。『絵をよく見て、そして言葉を感じて』。それを伝えるだけです。先生ではないので「南埜さん」、「おばあちゃん」と呼んでね、と子どもたちに言っています」と南埜さんは笑います。

子ども一人一人が持つ力、可能性に、いつも驚くという南埜さん。子どもたちは、読み聞かせの経験を通して、絵本の楽しさを知るだけでなく、本来持っていた力や個性を発揮しています。
南埜さんの穏やかで温かく優しい雰囲気が作るこの活動は、子どもたちにとって安心な場であり、学校でもなく、家でも習い事でもない第三の居場所となっているようです。

次世代に歌い継ぐ「天満の子守唄」

一方で、南埜さんは、「天満の子守唄」を次世代に歌い継ぐ活動もされています。わらべ唄の勉強をしていた時、講師から「天満の子守唄は大阪の宝です。大切にしてください」と教えられ、この歌の大切さを知ります。子育て中にこの子守唄を知った南埜さんは、よく子どもに歌っていたといいます。神戸出身の南埜さんは、大阪の人はこの子守唄を当然知っているだろうと思っていましたが、周りに聞いてみると、知っている人はごくわずかでした。

「この唄を残していきたい。」そんな思いが募る中、同じ思いを持つ仲間と出会い、「天満の子守唄」プロジェクトNUH(ヌー)〜つながる″わ “、が立ち上がりました。NUHは、南埜さんを含む発起人3名の名前のアルファベットからつけました。「天満の子守唄」を知ってもらうために、地域のイベントや音楽祭に出演したり、NUHのメンバーの尽力によりYouTubeに歌唱動画をアップしたりと、精力的に活動をおこなっています。

南埜さんに、これから何かにチャレンジをしたい方へのメッセージをうかがうと、「何かしたいと思う気持ちがあれば、色々考えず、まずは一歩を踏み出してみてください。そして、身近な人たちに自分の目標や夢を話してみることです。そうすれば必ず応援してくれる方が出てきますよ」とエールをいただきました。

ご自身の活動を一歩ずつ広げ、人や地域のご縁に感謝しているという南埜さんだからこそのメッセージでした。

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