イクボス10カ条から学ぶ ワークライフバランスを大事にしながら、仕事で結果を出せる素敵な上司になるには?

イクボス10カ条から学ぶ

「イクボス」とは、職場で共に働く部下・スタッフのワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことをいいます。

ひと言でいうと、「この人のもとで働きたい!」と部下に思わせる素敵な上司のことです。

とはいえ、ただ素敵であればいいというものでもありません。

イクボスを目指すためには、明確な指標が必要です。
その指標となるべきものが「イクボス10カ条」

これら、一つ一つを見ていくことにしましょう。

 

1.理解

部下に声を書ける上司
上司は、部下が「ワーク」一辺倒ではなく、「ライフ」にも時間を割くことに、きちんと理解を示していることが大切です。

子育てや介護など、家族の一員として取り組みたいこと、あるいは、自分自身のキャリアアップのための学び、持続的に仕事で成果を上げるためのリフレッシュなど、仕事以外のことに時間とエネルギーを注ぐチームメンバーの事情を心から理解できるか、そしてそれが、仕事と同じくらい大切で価値のあることだと認識していることが重要です。

例えば、ワーキングママ&パパはただでさえ「周りに迷惑かけている」と委縮しています。
残業ができない、休日出勤ができないなど、時間で補えない分、何とか効率のいい働き方をして成果を出そうと日々必死です。

こうしたことに上司が理解を示してあげられるだけで、部下のモチベーションは大きく変わってきます。

 

2.ダイバーシティ

仕事をする女性たち
上司にとって、ダイバーシティな経営意識は不可欠です。

組織でのダイバーシティとは、「多様な人材を活かす戦略」です。さまざまな違いを尊重して受け入れ「違い」を積極的に活かすことで多様化する社会に柔軟に対応できるようになります。

個々人の「違い」を尊重し、受け入れ、「違い」に価値を見つける。性別・年齢・国籍等に捉われず、個人の成果・能力・貢献を評価する、全職員が組織に平等に参画し、能力を最大限に発揮できるようにする。

それがダイバーシティです。

子育て中の社員が時短勤務をしている場合、限られた時間で最大限のパフォーマンスを発揮できるように支援するのもボスの役目です。勤務時間が短いからといって、簡単な仕事しか任せないのは、社員のやる気を削ぐことになってしまいます。

まずは、「会議やミーティングの時間を、夕方17時以降には設定しない」など、どんな家庭事情があってもチームの意思決定に参加しやすい環境を作ってみませんか。

 

3.知識

幸せそうな家族
ライフのための社内制度(育休や介護休暇の制度など)や法律(労働基本法など)を知っていますか?制度をよく知らず、説明もできない上司も少なくありません。

多くの場合、産休や育休の段取りについてもよく分からないものだから「う~ん、詳しく知らないから、人事部に聞いといてよ。」でおわってしまうこともあります。

これでは、部下も心細くなります。

女性の部下から「妊娠しまして…」と告げられたら、「うちの会社の場合、育休制度はこうなっていて…」と流れるように説明し、「君はどうしたい?」と部下の希望を受け入れると、部下は上司を頼もしく思い、安心するでしょう

男性の部下から「妻が妊娠しまして…」と告げられたら、「男性も育休取れるけど、取るつもりはある?」とまで言えるのが理想的です。

さらに、いまどきの保育所事情や、子どもの病気の流行なども把握できていれば、子育て中の部下は安心して仕事に励めます。

上司が様々な知識を持つことは、部下が仕事をしやすくするために、必要不可欠なことです。

 

4.組織浸透

ハイタッチ
「ワークもライフも大事にしよう!」という雰囲気は、その組織を率いるリーダー自身が率先して作っていくことで生まれます。

部下の家族構成や年齢を把握して、「昨日、小学校の入学式だった?おめでとう!」と声をかけたり、保育園の送迎がある部下の退社時間を把握しておいて「そろそろだからもう帰っていいよ。雨だから自転車は気をつけて。」と、積極的に声かけをすると、部下は自分が認めてもらえていると意識します。

同時に、上司自身も「今週、息子の野球の試合があるから、早めに帰って特訓につき合わなくちゃいけないんだよ。」といって、早めに仕事を切り上げると、部下は自分の子とも話しやすくなります。

デスクに家族の写真を飾るのも効果的だし、日頃からランチやちょっとした合間の雑談で、家族や趣味についての話題を笑顔で提供するなど、上司自身が自己開示をしておくと、組織内の浸透がスムーズになります。

 

5.配慮

部下に教える上司
家族を伴う転勤や単身赴任など、部下のライフに「大きく」影響をおよぼす人事については、最大限の配慮が必要です。

結婚し、子どもが生まれ、家を購入した直後に単身赴任を言い渡されたらどんな気持ちでしょう。

欧米先進国では、社員の遠方赴任が決まったら、パートナーも一緒に現地で働ける就職先か収入を保証して、家族まとめて暮らせる配慮がある国もあります。

北欧では、「幼い子どもが家族と多くの時間を共有できることは、その後の人間形成や家族の絆の形成に大きく影響する」ということが社会全体に広く認知され、企業にも浸透しています。

日本の常識≠世界の常識であることもありますので、グローバル人材の活用も見据え、視野を広く持つことが大切です。

日本の企業全体が単身赴任の制度を見直す日はまだまだ遠いかもしれませんが、一人ひとりの上司が個人の心がけで今日からできる配慮はあるはずです。

部下の家族の事情を考慮して、人事担当者と情報を共有しながら、遠方赴任の人選やタイミングについては、最大限の配慮をしましょう。

 

6.業務

テレビ会議中
組織内の業務が滞りなく進むようにするために、チームワークの醸成、組織内の情報共有の仕組みを作ることも、上司として取り組むべきことの一つです。

小さい子どもがいる社員は、突発的な休みのリスクが非常に高いです。それは、子育て中ならば当たり前のことで、避けようがないありません。そのようなことを予測した上で、先手を打っておくのがスマートなイクボスです。

情報が共有できていないと、「やっぱり彼(彼女)がいないと、誰も何も分からない」ということになって、子どもを看病中の部下に電話をかける事態になってしまいます。

そうならないためにも、誰が突然抜けても困らないように、それぞれの仕事の進捗状況や取引先との連絡手段などは、社内システムなどで密に共有する、いわゆる「マイナス1になっても、業務が回るチームづくり」を日ごろから意識しておくことが大切です。

 

7.時間ねん出

書類の山
上司は、部下がライフの時間を取りやすいように、会議の削減、書類の削減、意思決定の迅速化、裁量型体制なども進めなければなりません。

子育てや介護などの制約を抱えた社員にとって、時間は一分一秒無駄にはできません。

取りあえず2時間と決められた会議室にゆったりと座って、結論の出ない議論を続けることや、成果を出すことではなく、やり方を踏襲することが目的と化した作業など、効率性を無視した取り組みは、働ける時間に限りのある社員にとって、苦痛でしかありません。

労働時間が長い日本人ですが、時間当たりの成果である生産性は、先進国の中でも低いと言われていますが、こうしたムダな会議、ムダな書類、ムダなハンコを続けていては、とても働きやすいとは言えません。

部下のパフォーマンスを最大限発揮させるために、上司は、まず時間からねん出することが必要不可欠です。

 

8.提言

提言する上司
上司こそが部下のワーク・ライフ・バランスの最大の支援者でなければいけません。そのためには、人事部や上司の上司(社長)に対し、部下のライフを重視した経営をする重要性について積極的に提言するべきです。

イクボス的経営をチーム内だけではなく、組織全体に浸透するように働きかける努力ができるかどうか。

自分たちだけが動いても何も変わらないといつまでたっても行動しない上司を見ると、部下も同じように考え、いつまでも改善には結びつきません。

「社員のモチベーションが上がる」「時間当たりの生産性が高まる」、こうした会社にとってのメリットをしっかり打ち出して、組織全体に浸透させられるよう努力しましょう。その姿に、部下は心を打たれてついてきてくれるはずです。

 

9.有言実行

強い意志を持った上司
イクボスのいる組織や企業は業績も向上するということを実証し、社会に広める努力をするということです。これこそ、最大の課題とも言えるかもしれません。

いくら、部下のモチベーションが上がっても、企業活動の目的である「利潤追求」に直結しなければ、会社は取り合ってくれません。

自分が取ったイクボス的行動がどんな成果に結び付いているのか、数字として表せるものも表せないものも、周りに伝え発信しようとすることも、イクボスの役目のひとつです。

 

10.隗より始めよ

遊び父と娘
事を始めるには自分から始めること、上司自らワーク・ライフ・バランスを重視し、人生を楽しんでいることが絶対条件です。

仕事に没頭して家族のことを顧みない上司が、「君たち、人生楽しめよ。家族を大切にしろよ」なんて言葉を振りまいても説得力がありません。部下たちのほうが気を遣ってしまう始末です。

部下たちも、自分たちだけが休みをもらうことに申し訳なさを感じて、結果的にだれもやすめない職場が生まれてしまいます。

部下たちのためにも、まず自分がライフを大切にする働き方を実践しましょう。

いかがでしたか?
ひとつひとつは、「当たり前のこと」と思うかもしれませんが、これを実践するのは意外と簡単ではありません。

まずはできることろから始めて、ワーク・ライフ・バランスを大事にしながら仕事で結果を出せる素敵な上司をめざしましょう。

イクボス10カ条クイズ形式動画公開!大阪市職員が出演

大阪市では、男女がともに職場や家庭・地域生活などで活躍できる社会をめざして、市民や企業の方々に広くワーク・ライフ・バランスの意義、重要性を理解し、取り組んでいただけるよう、啓発を行っています。

その一環として、大阪市職員が演じる事例と共にクイズ形式で学べる「イクボス10カ条」動画を制作し、公開いたしました。

15分程度の動画です。ぜひ企業内研修等でご活用ください。


記事監修:NPO法人 ファザーリング・ジャパン

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