パートナー・家族と協力して育児・家事に取り組む男性をご紹介します。
プロフィール
- 水野 奨(みずの しょう)さん
- 5歳の男の子、1歳の女の子の父
- 以前は京都市男女共同参画センター職員として勤務していたが、現在「主夫」として家事と育児をほぼひとりで行っている
- 今秋よりパート勤務も開始する
出勤時間・退勤時間・お休みについて
- 主夫のため24時間フル稼働
家事・育児のパートナーとの割合について/妻:夫
- 家事 2:8 育児 2:8
パートナーの勤務形態
- 業種:海運業
- 勤務時間:変則勤務
- 休日:約2か月船上で勤務。その後約1カ月程度休み
年間3分の2は妻が不在。保育園や地域のサポートがワンオペ育児の支えに
2017年夏、我が家は大転換を迎えました。長男出産後、保育園への入園ができない事を理由に、やむを得ずキャリア継続を断念し主婦業に専念していた妻が再就職を果たしたのですが、その職業はクルーズ船のパーサーというお仕事。
2ヶ月ほど自宅を離れて船上で勤務することになりました。
最初は、私も仕事と両立したいと考えましたが、職場の制度を利用しても両立が難しいことから、私が主夫となる選択をしました。
今の日本社会では、主夫そのものがまだまだ珍しい家庭スタイルですが、我が家の場合年間3分の2は妻が不在のため、ほぼ“ワンオペ育児”(※)です。
※ワンオペ育児・・・配偶者の単身赴任など、何らかの理由に1人で仕事、家事、育児の全てをこなさなければならない状態。「ワンオペ」とは「ワンオペレーション」の略で、コンビニエンスストアや飲食店で行われていた1人勤務のこと。
私は、学生時代から児童福祉を専攻するほど子どもが好きで、子育て家庭を応援するべく地域活動や研究活動をしていますが、ワンオペ育児は想像以上に負担が大きく、常にストレスを抱えることに改めて気付きました。
ただ、家事育児で大変ながらも私自身も目標に向かってキャリアを形成していきたいと考えています。8月に大阪府下へ転居し、求職活動を再開しました。
9月からは長男だけですが保育園への入園が決まり、長女の一時保育も活用しています。
保育園の先生方には家庭の事情を話し、また地域のファミリーサポートにも登録し提供者の方とのつながりもできました。
理解し、協力してくれる方がいるということで、安心感を覚え、心はずいぶんと楽になりました。
同世代の同僚や女性社員が心強い味方となり育児休業を取得
長男が誕生したとき、私は一般企業に勤めていましたが、育児休業の取得を申請した際、50代の男性上司から
「俺は仕事一筋でやってきたから、理解できない」
「家のことは妻に任せておけばいい」
「育休を取れば、戻ってくる場所はないぞ」
「無責任だ」
などといった言葉を浴び、次第に無視され、話し合いにも応じてくれなくなるという“パタニティ・ハラスメント”を経験しました。
そんな時私の思いや考えを汲み取り背中を押してくれたのは、同世代の同僚や女性社員です。
「これからの時代は、水野さんのような男性が必要だから、パイオニアになって」と励まされ、育児休業の取得を応援してくれたのです。
最初は私が抜けることへの不安をもっていた部下たちも、業務マニュアルを作成しOJT(※)を強化したことで不安が取り除けただけでなく、個々がレベルアップし、チーム強化にもつながりました。
一般企業で男性が育児休業を取得することは簡単ではないかもしれませんが、その必要性や重要性を発信し続けることで社会は変わると思っています。
※OJT・・・職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育のこと。企業内で行われるトレーニング手法、企業内教育手法の一種である。(On-the-Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング の略)
子ども達もチームの一員として、一緒に家事を行うことを心がける
学生時代は実家で料理を作り、独身時代には自分で弁当を用意して出勤していたほど、家事には積極的でした。
しかしながら、一口に家事といっても得意なこと不得意なことがあり、主夫として成長していく必要性を日々感じています。
また、主夫になる前は、休日や妻の体調がすぐれないときなど、長男と一緒にキッチンに立っていましたが、主夫になってからは長男に「ぼくも手伝いたい」と言われても、余裕のなさから申し出を断ってしまうことが多いのも事実です。
子どもたちの自主性を汲み取り、育んでいかなければいけないなと反省しています。
家事の分担と言うと夫婦でと捉えがちですが、私は子どもたちもチームの一員であることを強く実感しています。
子どもたちは小さいながらも家事に協力的で、洗濯などを自発的に手伝ってくれるので助かります。
父子3人の生活がスタートして、早くも4ヶ月が経ちました。
新生活がスタートする前は、子どもたちが情緒不安定になることを心配していましたが、以前から父子の時間を大切にしていたためか、子どもたちが母を求めて泣くようなことはありません。
長男にいたっては、私を労ってくれるほどです。
むしろ寂しがっているのは妻の方ですが、SNSで近況の報告を行ったりビデオ通話をしたりしているので、物理的な距離はさほど感じません。
また、妻が休暇で帰ってきたときには、家事をたっぷりと担ってもらったり、子どもたちとの時間を大切にしてもらっています。
乳幼児期のかけがえのない時間を大切にできたことは大きな喜び
今でこそ主夫を業としていますが、これまで働くことに喜びを感じながら勤務してきましたし、結婚前は、朝早くから夜遅くまで働いていたこともあります。
しかし、結婚、子どもたちの誕生を機に働き方を見直しました。
長男の時には2ヶ月、長女の時には1ヶ月半の育児休業を取得し、その度にワーク・ライフ・バランスの大切さを実感してきました。
乳幼児期の子どもの成長は著しく、成長の仕方は、同じ家庭で育つ兄妹であっても異なります。
成長の一瞬一瞬を目に焼き付けたくなるようなこの時期の貴重な時間を、妻と一喜一憂できたことは本当に良かったなと感じています。
以前に京都市の男女共同参画センター職員としてパパ向けセミナーを企画運営していた経験から、様々なデータを見てきましたが、
<小学生以下の子をもつ父親のおよそ3人に1人が21時以降に帰宅している>
<子育て世代である30代男性のおよそ5人に1人が週60時間以上の長時間労働に従事している>
という現実があります。
パパたちが定時に退社するのはまだまだ難しい社会ではありますが、子育てを妻に任せきりにするのは「もったいない」。
子どものためにも、妻のためにも、そしてパパ自身のためにも家族との時間を大切にしていただきたいと思います。
さらには、パートナーが夢や目標をあなたに語った時、背中を押し支えてあげることで、夫婦が互いにイキイキと過ごせるのではないでしょうか。
そして子どもたちもまた、パパとママをみて生きることや将来をポジティブに捉えるようになるはずです。