コロナ禍で、ますます必要不可欠なテレワークやオンラインでの会議。特にWeb会議は、音声と動画で、よりリアルに近いやり取りができるので、暫くはメインの手段となりそうです。でも、実際には、まだまだリアルとの差を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。
オンラインでは相手の表情やしぐさなど視覚から入ってくる情報も少なく、その場の雰囲気を肌で感じることもできないので「自分の話はちゃんと相手に伝わっているのだろうか」「何だかしっくりこない」など、モヤモヤとした感情になることも多いでしょう。
どうすれば相手に印象深く明確に伝えることができるのか、オンラインでの話し方のポイントやコツをフリーアナウンサーの河田京子さんに伺いました。
「エネルギーは2倍以上に」
私たちプロのアナウンサーはただ単に番組を進行するのではなく、周りの方が楽しく自然にお話ができるようにと、その場の雰囲気作りから大切にします。しかし、オンラインだと雰囲気や温度感がつかめず、どうしてもリアルとの温度差を感じてしまうのが現実です。
その温度差を埋めるためには、通常の2倍以上のエネルギーを使ってパフォーマンスをする必要があります。
声の大きさやトーン、表情、ジェスチャーなど、いつもよりもよりパワーアップで臨むことで、オンライン越しでも伝わる話し方になります。では実際にどのようにするのか、具体的にポイントを紹介します。
「声のトーンは少し高めに明るく」
会話では声が低く小さい声は聞き取りづらいとされ、オンラインでのマイク越しの声はなおさらのこと。「冷たい」「不愛想」「自信がなさそう」などという印象を与えてしまいます。
いつもより少し高めの声で話すことでより聞き取りやすくハキハキとした明るい印象を与え、相手に伝わる声に変わります。
「口角を上げて話す」
口角を上げて話すことで、自然と声帯も引き上げられ、より伸びやかで明るい声が出やすくなります。また表情も自然と明るくなり好感度の高い、優しい表情へと変わります。
「メリハリをつけて話す」
淡々と一本調子で話していては印象に残らず伝えたかったことも伝わらないままになってしまいます。「抑揚」を上手に取り入れて、伝えたいところは「ゆっくり」話して、「ここが大切なところ」と相手にわかるように、スピードを変えて話すことで、メリハリがつき、重要なポイントと認識してもらえます。
もう一つ大切なテクニックは「間」を効果的に使うことです。
「間」を上手に使う人は会話の上級者と言われます。聞いている人が最も意識を集中するのは、話す人が沈黙になった時です。立て続けに途切れなく話すよりもこの「間」を効果的に使うことで、聞き手の気持ちを引き注目してもらえます。
句読点や文と文の間、「ここ」というポイントの前に1秒または2秒の間を入れて、相手が内容を理解しやすい話し方を意識しましょう。
「結論から話す」
限られた時間の中で生産性のあるweb会議にするには、ダラダラと考えていることを話すのではなく、最初に「結論から」伝えます。
「結論から話しなさい」と、よく言われることですが、一般に私たちは起承転結の話し方を刷り込まれていることが多いので、つい結論を最後に持ってきてしまいがちです。
余計なことを話してしまうと、本当に伝えたい重要な情報が埋もれてしまいます。意識して、まずは「結論から」話すことで、聞き手は重要なポイントと認識し、集中して話を聞き、より円滑なweb会議が展開できます。
「相手の話が終わってから発言する」
まだ話をしている人がいるのに、途中から口を挟むことはNGです。 相手の話が終わらないうちに、話を割って話し始めてしまう人もいますが、これは相手を不快な思いにさせてしまいます。
またweb会議はインターネットを介しタイムラグが発生することもある為、より話が伝わりにくくなります。タイムラグを認識し、相手が話し終わって一呼吸置いてから自分が話し始めると良いでしょう。
「オーバーリアクションで話す」
相手が自分の話を聞いてくれているか、誰でも気になるものです。相槌で声に出してしまうと、オンラインでは会話を止めてしまうこともあるので、相手が話をしている時は、いつも以上に深く頷いたり、カメラに前傾になったり、笑顔や表情、OKサインなどしぐさで伝えることが重要です。
「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」と伝えることで、相手に安心感を与えられます。そして、自分が話をする時は、ジェスチャーを効果的に使います。
例えば「今日、話すことは3つです」と言う時に、カメラに向かって3本の指を伸ばす。「売り上げが上がりました」と話す時も、手をアップするだけでも、視覚から印象に残り伝えることができます。
ジェスチャーを大きくすることで聞き手を飽きさせず「この人は一生懸命話している」という熱意を感じてもらえます。
「自分軸ではなく相手軸に立つ」
Web会議でもオンラインでも、人と会話をする上で大切なことは、相手を受け入れ、受け止めることです。まずは「相手の話を聞く」ことです。
アナウンサーは、その場その場に応じて、相手に合わせて声のトーンやスピード、 表情、目線、会話の内容などを考えていきます。自分軸に立つのではなく相手軸に立つことで、より良い関係性が生まれ、会話も生き生きとしたポジティブなものへと発展していきます。
いかがでしたか?いくつかオンラインでの話し方のポイントをお伝えしました。
Web会議前後の雑談や、ふとした会話から、仕事のアイディアやヒントが生まれることもあります。オンラインだからと狭くとらえず、 積極的に話す機会を増やしましょう。人との会話が何よりの気分転換にもなります。
閉塞感を感じやすいコロナ禍、上手にオンラインでの会話もライフスタイルに取り入れていただけたらと思います。
フリーアナウンサー。話し方・コミュニケーション術講師。NHK初め民放各局でMCやリポーターなど現役アナウンサー歴28年以上。みのもんた氏と長期に渡りラジオ番組共演、テレビ朝⽇生CMなど出演多数。またフリートークを得意とし、著名人とのトークショーも多数。イチロー選手、⾼橋尚子、野村萬斎、尾木ママ、柴崎コウ、ドン小西など多数共演。長年の経験とスキルを活かし、アナウンス、話し方、コミュニケーション術、ビジネスマ ナー講師としても多岐にわたり活動。大学や企業向けセミナー、ミスインターナショナルスピーチトレーナー、個人向けレッスンなど受講者からも好評を得ている。神奈川大学⼯学研究所特別研究員として学生に向けて講義も担当している。