地域社会では、防災・福祉など様々な活動がボランティアの方々によって担われ、日常生活における安心・安全につながるコミュニティづくりに寄与しています。
地域の多様化する課題やニーズに対応していくためには、様々な視点から課題解決できる人材の確保が必要であり、地域活動の担い手は、性別等において多様であり、役割が固定化されないことが重要です。
淀川区の新東三国地域活動協議会では、役員の男女比が半々となっており、活動の方針や企画の検討に女性の意見を積極的に取り入れ、新たな取組を実現させるなど、女性のアイデアを生かした活発なまちづくりが行われています。
地域で活躍する女性ロールモデルとして令和3年3月に当サイトでご紹介しました増田裕子さんの所属する新東三国地域活動協議会の役員の皆さんに、地域の様々な取組やエピソード、活動を進めるにあたって大切にしていることなどを伺いました。
地域活動に女性のアイデアも取り入れて
新東三国地域活動協議会は、比較的新しく開発されたマンションや集合住宅が立ち並ぶ地域で、若い世代も地域活動に多く参画されています。
そうした地域の特性から、役員会も意見を言いやすく、新しい提案が受け入れられやすい雰囲気で、昔から地域活動に関わってきた役員の方たちも、若手メンバーの「前例にとらわれず、新しい取組をどんどんやってみたい」という思いに大変寛容だそうです。
会長の仲川勝さん・副会長の辻本啓二さんも、「新しい事を始めれば、人との新たなつながりも生まれる。地域活動は担い手不足なので、外部のアイデアや人材を取り入れることは地域にとって大切なこと」と柔軟な発想をお持ちです。
副会長の増田さんをはじめ、会計、書記など役員8名のうち半数が女性であり、運営・活動の方針決定において、女性が中心的な役割を果たしています。現在行われている取組は、女性役員が提案したものも多く、役員間での活発な意見交換を経て、実現されたそうです。
新東三国地域活動協議会を構成する新東三国連合振興町会(計11町会)の会長職は、令和4年度は男性:女性=5:6(令和3年度は男性:女性=7:4)になるとのこと。当初は男性が多かったそうですが、ここ数年女性も徐々に会長職を引き受けるようになったそうです。各町会で実務を担っていた女性メンバーが会長に就任していますが、連合振興町会内の連携もスムーズに行うことができているそうです。
「これまでも多くの女性が地域活動に参加してきましたが、中心的な役割を担っていないケースが多かったと思います。女性も恐れることなく、地域活動の企画や方針決定に女性が携わること、参画していくことが大切だと思います」とのことでした。
【取組紹介】女性の視点も生かした地域防災活動
▶住民主体で「地区防災計画」を策定
新東三国地域活動協議会では、役員メンバーを中心とする住民主体で、自ら防災活動を行うための地区防災計画を令和3年3月に策定されました。
「防災計画」と聞くと堅苦しい印象がありますが、今回策定した計画の冊子は、淡い色味のイラストや丸みを帯びたフォントを使用するなど、やわらかい印象のデザインで、「誰にとっても読みやすく、身近に感じられる計画に」という思いが込められています。当初は30ページ程度を想定していたそうですが、地域の特性など基本的な情報・データを色々と盛り込むうちに、約60ページの大作に。震災等の有事だけでなく、地域活動のバイブルとなりそうな素晴らしい内容です。
▶目から鱗?若手役員の発案で防災訓練を見直し
地域の防災訓練に関して、印象に残っているエピソードを教えて頂きました。
従来の訓練では、停電することを想定して、被害状況等の情報を手書きでカーボン紙に書き写して共有する取り決めとなっており、長年その運用を守ってきたそうです。
それがある時、女性の若手役員から
「発電機を回す訓練をして、プリンターを動かして印刷した方が効率的ではないですか?」
という発言が突如飛び出したのだとか。その提案に対して、役員の皆さんは否定するのではなく、それもそうだと受け入れ、何度も議論した結果、従来の運用を変更して発電機の稼働訓練を行うようになったそうです。
その役員の方にお話を伺ったところ、「役員会は、新しい意見を出しても否定されない雰囲気がある。その安心感があるから、私たちもとりあえず色々言ってみることが出来るんです」とのこと。
男性中心に方針決定が進められがちな防災分野において、女性が前例にとらわれず柔軟な発想で改善案を提起し、それが皆に受け入れられて実際に取組が変わった、このことは、男女問わず活動の方針決定に携わることができる地域であることを象徴する出来事とも言えそうです。
【取組紹介】SNSを活用した積極的な情報発信
▶Facebookを活用した情報発信
コロナ禍でイベント活動等は自粛せざるを得ない中、地域への関心、住民間のつながりを保つため、新東三国地域活動協議会では、地域のFacebookページを活用して活動内容の情報発信を頻繁に実施されています。
仲川会長も「コロナ禍だから何もできない、何もしないのではなく、何かできることを見つけてやっていく」と情報発信に積極的。
記事を投稿している役員さん曰く、「住民にとって、自分に身近な地域の情報には何らかの刺激があるはず。ただ情報を掲載、更新するだけではなく、一人でも多く地域に興味をもってもらえるように、楽しく読んでもらえる工夫を意識して投稿している」そうです。
▶LINEグループを活用した地域活動のカタチ
新東三国地域では、歩いて行ける距離のコミュニティということもあり、地域の中ではなかなかSNSの活用が進んでいなかったそうです。ところが、コロナ禍で人が集まる会議やイベントができなくなったことから、情報共有のためにとりあえずできる人でLINEグループを作ることにしました。LINEグループを作って一番のメリットはメンバー全員に一斉に情報を発信でき、共有できる点です。最初は地域役員グループから始まって、現在では地域活動協議会の運営委員でLINEグループを作成し、街の情報をタイムリーに共有できることで、様々な地域課題への対応が速やかになったそうです。
地域活動を楽しくする工夫を心がけて
新東三国地域活動協議会では、とにかく活動を止めない、どんなに小規模でもできることを行っていくというスタンスで活動しているそうです。そして、「活動するなら楽しく」がモットーで、とにかく楽しかったで終わることをめざしたいとのこと。
地域活動の中には、地域の安全と安心のためにぜひ伝えたい防犯情報や防災情報もあります。ただ、それを前面に出すと、活動自体が堅苦しくなってしまい、参加者が増えません。そこで楽しいイベントの中で「伝えたい大切な情報」を伝えることを心がけているそうです。こういったアイデアも女性役員からの発案であることが多いそうです。
今はコロナ禍で、お祭り、キャンプファイヤーといった子どもたちが大好きなイベントが大規模にはできません。それでも中止ではなく、小規模でも開催することで、地域で育った子どもたちがおとなになった時、『あの行事、楽しかったよね』と思い出してもらえたら嬉しいという思いで活動の企画を続けているそうです。
出前講座「女性の活躍推進に向けて」の実施
大阪市では、職員が講師として地域等へお伺いして、施策の紹介や意見交換をさせて頂く出前講座「あらゆる分野における女性の活躍推進に向けて」を実施しています。
今回の新東三国地域活動協議会の取材にあたっては、役員の皆様へ本市の女性活躍推進の取組をご紹介させて頂くとともに、地域におけるダイバーシティ(人材の多様性)や男女共同参画の推進といった観点から意見交換をさせて頂きました。(令和4年1月29日実施)
仲川会長からは「地域におけるダイバーシティとは、男女という性別だけでなく、子どもから高齢者まで様々な世代や、色々な立場・考えの人も含めて、あらゆる意味での多様性を受け入れていくことだと思う」と大変貴重なお言葉を頂きました。
これからも、大阪市ではあらゆる分野における女性の活躍を応援する取組を進めていきます。
関連コンテンツ
※令和3年3月に増田裕子さんをご紹介した記事はこちらをご覧ください。
「地域活動は実は楽しい」チャレンジの先輩に聞く!活動を始めるヒント vol.28
大阪市からのご案内
▶出前講座を活用しませんか?
大阪市では、企業や地域活動団体(町会、PTA、ボランティア、NPOなど)等を対象に、出前講座「あらゆる分野における女性の活躍推進に向けて~働き方・暮らし方を見直そう~」を実施しています!
職場や家庭、地域生活における女性を取り巻く現状や課題を学ぶことで、男女ともにワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むことや、企業や団体等において多様な人材を活用する意義への理解を深めます。
女性がもっと活躍できる社会の実現に向けて、自らの働き方や家事・育児の関わり方、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を見直すなど、一人ひとりができることを考えるきっかけづくりとして活用しませんか?
出前講座のお申込みはこちら(大阪市生涯学習情報提供システム)
▶女性チャレンジ応援拠点をご利用ください
地域生活の場において、女性がいきいきと主体的に活躍することを応援する「女性チャレンジ応援拠点」を大阪市立男女共同参画センター中央館(クレオ大阪中央)内に開設しています。
地域生活の中で何か活動を始めようと思われている方や、地域における様々な活動への参画に関心や意欲のある方、現在行っている地域活動のステップアップを考えている方やその活動を応援したいと思っている方など、地域生活における女性や団体の皆さんの様々なチャレンジをサポートするため、専門のコーディネーターやスタッフを配置して、相談対応やアドバイスを行っています。
また、知識・ノウハウの習得や活動のレベルアップ等の機会として活用いただけるよう、ワークショップや交流会も開催していますので、ぜひお気軽にご利用ください。
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