すがわら えみさん
(NPO法人AQUAkids safety project代表)
「『私』が伝えなくていいの?」家族の言葉で感じた使命感
NPO法人AQUAkids safety project(アクアキッズセーフティープロジェクト)代表のすがわらえみさんは、子どもたちを水辺の事故から守ること、予防することを目的に、各種ワークショップや講座の開催、SNSやHPでの情報発信等の活動をされています。
「水辺」といっても海や川、プールだけでなく子どもと入るお風呂や、公園の噴水周りまで広い範囲を対象としています。
水泳インストラクターの仕事をされていたすがわらさん。
ご自身が親になったことをきっかけに、毎年夏になると報道される子どもの水難事故に「なんで毎年起こってしまうんだろう。
なんで防げないんだろう」と、より心を痛めるようになりました。
そう思っていたすがわらさんは、家族に「それはみんなに水の事故を防ぐ知識が無いからだよ」と言われてハッとします。
自分が水泳インストラクターとして当たり前に知っている、水辺で楽しむための注意点や事故が起こった時の対処の方法を知らない人が多い。
泳ぎ方は教えてもらっていても、溺れないためにはどうすればいいか、溺れた時にどうしたらいいかは教えてもらっていないということに気づきました。
それなら水辺で遊ぶ親子にそういった知識があれば子どもたちの命を救えるかもしれない。
命を守れる知識を持っている私がそれを伝えなくていいの?そんな使命感が芽生えた瞬間でした。
一つだけでも知識を持ち帰ってほしい。「サンダルバイバイ」
そこからは少しずつ自分の周りで、水辺の安全に関する知識を伝え始めます。地域の子育てサークルやカフェに出向いて話をしたり、地域の子育てプラザなどで講座やワークショップの開催を重ねました。
すがわらさんが心掛けているのは「参加後に一つだけでも実践してもらうこと」。
子育て中の保護者はとても忙しい。講座でいろいろ学んでもすべてを覚えて実践はできません。
「水に入って遊んだら1時間に1回休憩する」
「海や川に行く前は天気を調べる」
だけでもいい。
小さい1歩を実践してもらえるように伝え方を工夫しているそうです。
実践できる小さな一歩として、すがわらさんが考えたのが「サンダルバイバイ」。
流されたサンダルを追いかけて溺れてしまう事故は昨年も起きており、それを予防するために「サンダルや浮き輪が流されても追いかけない」ことを約束する合言葉です。
ポスターや動画、親子で約束する「おやこ条約」ツールも作成し、各種メディアからも取材を受けています。
海や川に遊びに行った帰り道「楽しかった!」と思えるのがゴール
それでも毎年起こる水の事故のニュースを聞くと、落ち込んでしまうこともあるそうです。
事故は防げてもニュースにはならないので、目に見える活動の成果はなかなか感じにくいと言います。
けれど時々、初めて出会った人に
「水辺の安全の活動してる方ですよね!」
「すがわらさんのSNSを見てライフジャケット買いました!」
などと言ってもらえることもあり、その時は地道な発信が、ちゃんと伝わってるんだ!と嬉しくなるそうです。
これからチャレンジしたい人へのメッセージをうかがうと、「自分のやりたいことを誰かに話してみること。応援してくれそうな人に話すということも大事」とのことでした。
すがわらさんは、活動を始めたばかりの時に偶然、女性チャレンジ応援拠点を訪れました。自分の想いをスタッフに話して応援してもらったことで、自信が持てたそうです。
「NPOを作るタイミングでも相談に伺い、最後の一押しをしてもらった印象です」と言ってくださいます。
すがわらさんの今後の目標は、「『サンダルバイバイ』を広めていくことと、活動を細く長く続けていくことで、海や川に遊びに行った帰り道に家族みんなが楽しかった!と思えることがゴール」だそうです。
コロナ禍では講座のオンライン開催も増えて、遠方や学校からの依頼もあります。2020年の学習指導要領には「水辺の事故防止に関する心得」についての項目が入ったという追い風もあり、すがわらさんの活躍のフィールドはこれからますます広がっていきそうです。
HP https://aquaproject721.wixsite.com/website
Instagram @aqua.project