嶋田 エリカさん(すばことしょかん館長)
『楽しみ』が活動の原動力
神社の境内にちょこんと置かれた巣箱の形をした「まちライブラリー@すばことしょかん」は、嶋田エリカさんが図書館司書の仕事をしながら、友人と2人で運営している小さな私設図書館です。嶋田さんの地元にある神社の境内に平成28年5月、オープンしました。
そのかわいらしい風情と、司書資格を活かした確かな本のセレクトが魅力で、子どもからお年寄りまで幅広い世代の地域の人々に親しまれています。普段は無人の図書館なので、嶋田さんたちが本を借りる人に出会う事はほとんどありませんが、寄贈本を入れる「植本」というワークショップや「青空読書会」など、利用者と触れ合うイベントなども開催しています。
活動のきっかけは「大阪でまちライブラリーが広まっている」という雑誌記事でした。その後、資料を調べ講習会に参加して、開設について勉強されました。当時、仕事は充実していましたが、「仕事とは違う何か活動をしたい」「自分の思いを一生に一度くらいは形にしてみたい」と思っていて、そんな時にまちライブラリーの存在を知り、「自分も作ってみたい」と、とてもワクワクしたそうです。
以前、神社での移動図書館の光景が印象的だったことから、地元で昔馴染みだった藤井寺市の伴(とも)林(はやし)氏(のうじ)神社にお願いに行きました。最初はイメージがうまく伝わらず、神主さんに「本がなくなったらどうするの?」と言われたことも。それでもあきらめずに自分の思いを伝えると「神社に来る子どもが増えるのは良い事ですね」と理解いただき、協力を得ることが出来ました。
本を通して広がる人との縁
巣箱を組み立て、ペンキを塗り、運営の仕組みも自分たちで考え、一から作り上げて行くことがとても楽しかったそうです。出来映えには満足でしたが、開館して半年ぐらいは1冊も貸出しが無かったそうです。けれど少しずつ、近所の子どもたちを中心に利用が広がり、最近では、親子で借りてくれる人たちや、読んだ感想をカードに書いてくれる人も増え、本を通してつながりが広がっています。
そんな活動が実を結び、全国の私設図書館のオーナーや運営に携わる人々が集う「マイクロライブラリーサミット」で、すばこ図書館の活動が賞を受賞。生まれて初めて100人以上の前での発表は緊張したものの、色々な人に声をかけてもらい良い経験になったそうです。
活動を続けていると、テレビの取材など思いもよらない出来事も多くなったと実感されています。女性チャレンジ応援拠点との出会いもその一つ。自身のスキルアップのために受講したクレオ大阪のセミナーから縁が繋がり、女性チャレンジ応援拠点のミニサロン「読書会」のファシリテーターを担当。また、本をきっかけにした新たな縁が生まれました。
一歩が難しければ、半歩でもいい。
「これから何かチャレンジしたい女性」に伝えたいことをお聞きすると、「特別な何かはなくても、まず一歩進んでみること、一歩が難しければ、半歩でもいい。半歩進んで様子を見ると、その先に何かが見えてくるはず」とのこと。「女性チャレンジ応援拠点は明るくて安心できる場所なので、まずは、ここに来てみることが、半歩進むことになるかも」とおっしゃいます。
「『すばことしょかん』は、当初に自分たちが思っていた以上に大切な存在になりました。本には人と人をつなぐ不思議な力があって、本を通して話題が盛り上がることもたくさん経験しました。『本も、本を好きな人も好き』なので、これからの人生の中で、働き方やライフスタイルが変わったとしても、その時『楽しい』と思ったことを大切に続けていきたい。」と、少しはにかみながらも、キラキラした瞳でお話される姿が、印象的でした。
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