置田 訓子さん(介護福祉士、笑門(えかど)代表)
介護の未来はレクリエーション介護にあり!?
有料老人ホームやデイサービス、特別養護老人ホームで介護福祉士として約9年間勤務してきた置田さん。
日頃接する高齢者の方の中には、口数も少なく笑顔のない人もいて、それがずっと気になっていました。
平成12年にWHO(世界保健機関)が「健康寿命」を唱えて以来、いかに健康に生きるかに関心を持ち続けてきた置田さん。
平均寿命と健康寿命との差は男性8.84年、女性12.35年(平成28年)。人生の集大成とも言えるこの時間を笑顔で健康に過ごせるお手伝いができたら…。
そんな思いを持ちながら、日々の介護業務に携わるうちに、クラフト(工作)や体操、芸術活動などのいわゆる介護レクリエーションが身体機能や認知症予防に有効だという研究結果があることを知りました。
そして平成29年にレクリエーション介護士1級の資格を取得。勤めている施設で、置田さんが考案した介護レクリエーションの時間が始まると、これまで無表情だった入所者の方にパッと笑顔の花が咲きました。
自分の得意分野である介護の世界で、健康寿命を支える活動ができる…!置田さんのスイッチがONになった瞬間でした。
自分の可能性を実感できた「大阪市女性チャレンジ応援拠点」→ビジネスプラン発表会へチャレンジ
そんな置田さんが初めて大阪市女性チャレンジ応援拠点を訪れたのは平成29年9月。介護の仕事と並行してレクリエーション介護士として独自の活動を始めたい、そう思った時期でした。
「笑う門には福来たる」にちなんで「笑門(えかど)」と名付けられた置田さんの活動。まっさらな活動のフィールドに少しずつ組織基盤やビジョンなどの“要素”を加えていき、拠点スタッフも一緒になって笑門の発進をサポートしました。
平成30年の春、拠点で知り合った方から、近畿経済産業局の女性起業家応援プロジェクト”LED関西”に挑戦してみては?と提案された置田さん。
介護レクリエーションを世の中に認められる仕事に高めるには何が必要なのか?経営学、マーケティング、ビジネスプラン立案など学ぶべき事柄があまりに多くて心が折れそうになったこともありましたが、拠点スタッフからの助言とLED関西事務局からのサポートもあり、自分が進むべき道がはっきりと見えるようになったと振り返ります。
健康寿命を支える人も、支えたい
置田さんの活動の対象は「高齢者」、そしてもう一つの“軸”は「介護従事者」です。介護の業界は、一般的には「いわゆる3K(きつい、汚い、危険)」といわれる職場。やりがいがある一方で給与や勤務条件は厳しく人材が常に不足しているという課題があります。さらには介護現場で働いている人の中には、介護レクリエーションの有効性を知っていても、実践するのが苦手だったり、なかなか上手に出来ない、という悩みを抱えている人も大勢いるそうです。置田さんは、高齢者の方が笑顔でいきいきと過ごせる場の提供と、介護従事者が満足感と達成感を得られる働き方の実現、このどちらも満たせる活動をめざしています。
健康で長生きしたいのは誰しも共通の願い。世界トップクラスの長寿国である日本なら一層その重要性は高まるはず。そこに自分の立ち位置があるはずだと置田さんは考えています。レクリエーションは「Re+Creation」と書き、生きていく元気を“再び、作り出す”こと。めざすのは、「楽しみが生き甲斐に変わる」そんなレクリエーション。
現在では、置田さんのもとへ高齢者施設から介護レクリエーションをして欲しいという依頼も増えてきています。置田さんの活動フィールドは、高齢者の方や介護スタッフの明るい笑顔と笑い声の中で、今後もどんどん広がっていきそうです。